令和6年度の社会保険料改定が発表され、多くの会社員やパート労働者に影響を与えることになりました。社会保険料は私たちの給与から毎月自動的に控除される重要な支出項目です。この改定により、手取り収入がどのように変化するのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
社会保険制度は国民の健康や老後の生活を支える重要な仕組みですが、少子高齢化の進行に伴い、保険料率は年々上昇傾向にあります。令和6年度においても、健康保険や厚生年金保険を中心に保険料率の見直しが行われ、多くの方の給与からの控除額が増加することになります。
本記事では、令和6年度の社会保険料改定の具体的な内容について詳しく解説します。健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料などの各保険料がどのように変わるのか、そして実際の給与からいくら控除されるのかを、わかりやすく計算例を交えて説明していきます。
また、年収別の負担増加額のシミュレーションや、適法な範囲での社会保険料の負担軽減方法についても触れていきます。この情報を活用して、ご自身の家計への影響を事前に把握し、必要に応じた対策を講じる参考にしていただければ幸いです。社会保険制度の理解を深め、将来の生活設計に役立てましょう。
令和6年度の社会保険料改定のポイント
令和6年度の社会保険料改定は、日本の少子高齢化の加速と社会保障費の増大を背景に実施されています。高齢者人口の増加による医療費や年金支給額の増加、現役世代の減少による保険料負担者の減少という構造的な課題に対応するため、保険料率の見直しが避けられない状況となっています。
前年度(令和5年度)からの主な変更点として、まず健康保険料率が全国平均で0.1%ほど上昇しています。また、厚生年金保険料率は段階的引き上げの最終年度を迎え、18.3%に固定されました。雇用保険料率も失業給付の需要増加を見込んで微増しています。
令和6年度 社会保険料改定一覧表
| 保険の種類 | 令和5年度料率 | 令和6年度料率 | 変動 |
|------------|--------------|--------------|------|
| 健康保険(全国平均) | 約9.8% | 約9.9% | +0.1% |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 18.3% | 変更なし |
| 雇用保険(一般) | 0.9% | 1.0% | +0.1% |
| 介護保険(40歳以上) | 1.8% | 1.9% | +0.1% |
特筆すべき点として、健康保険料率は各都道府県の医療費状況により地域差があり、東京や大阪などの大都市圏では全国平均よりも高い料率が設定されています。これは医療機関へのアクセスの良さや高度医療の普及による医療費の地域差を反映したものです。
また、令和6年度の改定では標準報酬月額の等級区分にも一部見直しがあり、上限額が引き上げられました。これにより高所得者層の保険料負担が増加することになります。
この改定により、一般的なサラリーマン世帯では年間で数千円から数万円の負担増加が見込まれます。特に共働き世帯では夫婦それぞれに保険料負担が発生するため、家計への影響は大きくなる可能性があります。
企業側にとっても、従業員の社会保険料の事業主負担分が増加するため、人件費の上昇につながります。中小企業を中心に、この負担増加をどのように吸収するかが経営課題となっています。
健康保険料の改定詳細
健康保険料は、医療保険制度の根幹をなす重要な社会保険料です。令和6年度の健康保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)管掌の場合、全国平均で約9.9%となりました。これは前年度と比較して約0.1%の上昇となります。この保険料は労使折半で負担するため、実際に給与から控除される割合は約4.95%となります。
しかし、健康保険料率は都道府県ごとに異なるという特徴があります。これは各地域の医療費水準や加入者の年齢構成などを反映して設定されるためです。例えば、令和6年度の健康保険料率は、最も高い佐賀県では10.73%、最も低い新潟県では9.58%と、1%以上の差があります。東京都は10.00%、大阪府は10.19%となっており、大都市圏では比較的高めの料率が設定されています。
健康保険料の計算には、「標準報酬月額」と「標準賞与額」という概念が用いられます。標準報酬月額は、実際の給与(諸手当を含む)を一定の幅で区分した等級に当てはめたものです。例えば、月給28万円の場合、標準報酬月額は28万円の等級に分類されます。この標準報酬月額に健康保険料率を掛けて毎月の保険料が算出されます。
具体的な計算例として、東京都在住で月給30万円の会社員の場合を見てみましょう。
1. 標準報酬月額:30万円
2. 東京都の健康保険料率:10.00%
3. 月額保険料:300,000円 × 10.00% = 30,000円
4. 個人負担分(労使折半):30,000円 ÷ 2 = 15,000円
つまり、この方の給与からは毎月15,000円が健康保険料として控除されることになります。
また、賞与(ボーナス)に対しても健康保険料が課されます。これは「標準賞与額」として計算され、実際の賞与額に保険料率を掛けて算出します。例えば、夏季ボーナスで60万円を受け取った場合、東京都の料率では60万円 × 10.00% = 60,000円が保険料総額となり、個人負担は30,000円となります。
健康保険料は40歳以上65歳未満の方については、上記の料率に介護保険料率(約1.9%)が上乗せされる点も重要です。これにより40歳を境に保険料負担が増加するため、家計管理においては注意が必要です。
厚生年金保険料の改定詳細
厚生年金保険料は、将来の年金給付のために徴収される社会保険料の中でも最も大きな割合を占める項目です。令和6年度の厚生年金保険料率は18.3%に設定されています。この料率は、平成16年の年金制度改革により段階的に引き上げられてきましたが、令和4年9月から18.3%で固定されることになりました。つまり、令和6年度においては前年度からの変更はありません。
厚生年金保険料も健康保険料と同様に労使折半で負担するため、実際に給与から控除される割合は9.15%となります。厚生年金保険料は健康保険料と比較して料率が高いため、給与からの控除額も大きくなります。
改定による影響額については、料率自体は変わらないものの、標準報酬月額の上限引き上げなどにより、高所得者を中心に負担増となるケースがあります。また、令和6年度から産前産後期間の保険料免除制度の拡充なども行われています。
年収別の負担額を試算してみると、以下のようになります。
年収300万円の場合
- 月給:約25万円
- 標準報酬月額:約24万円
- 月額厚生年金保険料(個人負担分):24万円 × 9.15% = 21,960円
- 年間負担額:約263,520円
年収500万円の場合
- 月給:約42万円
- 標準報酬月額:約42万円
- 月額厚生年金保険料(個人負担分):42万円 × 9.15% = 38,430円
- 年間負担額:約461,160円
年収800万円の場合
- 月給:約67万円
- 標準報酬月額:約65万円
- 月額厚生年金保険料(個人負担分):65万円 × 9.15% = 59,475円
- 年間負担額:約713,700円
具体的な計算例として、月給35万円の会社員の場合を詳しく見てみましょう。
1. 標準報酬月額の決定:実際の給与(基本給+諸手当)が35万円の場合、標準報酬月額は34万円と認定されます。
2. 厚生年金保険料の計算:340,000円 × 18.3% = 62,220円
3. 個人負担分の計算(労使折半):62,220円 ÷ 2 = 31,110円
つまり、月給35万円の会社員の場合、毎月の給与から31,110円が厚生年金保険料として控除されることになります。さらに、賞与に対しても同様の料率で保険料が課されます。例えば100万円の賞与を受け取った場合、個人負担分として91,500円(100万円 × 9.15%)が控除されます。
厚生年金保険料は将来の年金受給額に直結するため、負担は大きいものの、老後の生活保障という観点からは重要な社会保障制度の一部となっています。
雇用保険料・介護保険料の改定詳細
令和6年度の社会保険料改定において、雇用保険料と介護保険料にも変更が加えられました。これらの保険料は比較的小さな金額ながら、総合的な社会保障制度を支える重要な役割を担っています。
雇用保険料の令和6年度の新料率は、一般の労働者の場合、1.0%に設定されました。これは前年度の0.9%から0.1%の引き上げとなります。雇用保険料は労使で負担割合が異なり、労働者負担分は0.5%、事業主負担分は0.5%となっています。この改定は、コロナ禍後の雇用情勢の変化や失業給付の需要増加に対応するためのものです。
業種別に見ると、農林水産・清酒製造の事業では1.1%、建設業では1.2%と、一般よりも高い料率が設定されています。これは業種ごとの雇用の不安定さや季節変動を考慮したものです。
一方、介護保険料は40歳から64歳までの第2号被保険者が支払う社会保険料の一部として、健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。令和6年度の介護保険料率は1.9%となり、前年度の1.8%から0.1%引き上げられました。こちらも労使折半で負担するため、実際の給与からの控除率は0.95%となります。
年齢による違いは介護保険料において特に顕著です。39歳以下の方は介護保険料の負担がなく、40歳の誕生日を迎えた翌月から介護保険料の支払いが始まります。この年齢による区分は、介護サービスの主な利用者が高齢者であることを踏まえたものですが、40歳を境に社会保険料負担が増えるため、家計管理上の注意点となります。
具体的な計算例として、月給40万円の45歳会社員の場合を見てみましょう。
1. 雇用保険料の計算:
- 400,000円 × 0.5%(労働者負担分)= 2,000円
2. 介護保険料の計算:
- 標準報酬月額:40万円
- 介護保険料率:1.9%
- 介護保険料総額:400,000円 × 1.9% = 7,600円
- 個人負担分:7,600円 ÷ 2 = 3,800円
つまり、この45歳会社員の場合、雇用保険料として2,000円、介護保険料として3,800円、合計5,800円が毎月の給与から控除されることになります。
これに対して、同じ月給40万円でも39歳以下の会社員の場合は、介護保険料の負担がないため、雇用保険料の2,000円のみが控除されます。このように、年齢によって社会保険料の負担額は大きく異なる点に注意が必要です。
雇用保険料は失業時の生活保障や職業訓練の財源として、介護保険料は増加する介護需要に対応するための財源として、どちらも私たちの生活を支える重要な社会保険制度です。
社会保険料の計算方法
社会保険料の計算方法を理解することは、自分の給与明細を正確に把握するうえで非常に重要です。ここでは、社会保険料がどのように計算されるのか、その基本的な仕組みと手順を詳しく解説します。
まず、社会保険料計算の基礎となる標準報酬月額の決定方法について説明します。標準報酬月額とは、実際の給与額をもとに、社会保険料を計算するための基準となる金額です。具体的には、毎年4月から6月までの3か月間の給与(基本給+諸手当)の平均額を、社会保険庁が定める等級表に当てはめて決定されます。この標準報酬月額は原則として9月から翌年8月まで適用されます。
標準報酬月額の等級は、最低の第1級(88,000円)から最高の第32級(650,000円)まであり、それぞれの等級には対応する標準報酬月額が設定されています。例えば、実際の給与が254,000円〜257,999円の範囲内であれば、標準報酬月額は第14級の260,000円となります。
社会保険料の計算手順は以下のとおりです:
1. 標準報酬月額を確定する
2. 各保険料率(健康保険料率、厚生年金保険料率など)を掛ける
3. 労使折半の場合は、算出された金額を2で割る
月額給与からの控除額の求め方を具体例で説明します。例えば、東京都在住の35歳会社員で、月給が33万円の場合:
1. 標準報酬月額の確定:33万円→第17級の340,000円
2. 健康保険料の計算:
- 東京都の健康保険料率:10.00%
- 340,000円 × 10.00% = 34,000円
- 個人負担分:34,000円 ÷ 2 = 17,000円
3. 厚生年金保険料の計算:
- 厚生年金保険料率:18.3%
- 340,000円 × 18.3% = 62,220円
- 個人負担分:62,220円 ÷ 2 = 31,110円
4. 雇用保険料の計算:
- 雇用保険料率(労働者負担分):0.5%
- 330,000円(実際の給与)× 0.5% = 1,650円
この例では、健康保険料17,000円、厚生年金保険料31,110円、雇用保険料1,650円の合計49,760円が毎月の給与から控除されることになります。
次に、ボーナスからの控除額の計算方法について説明します。賞与(ボーナス)に対する社会保険料は「標準賞与額」をもとに計算されます。標準賞与額は実際に支給される賞与の額をそのまま用いますが、健康保険と厚生年金保険にはそれぞれ上限が設定されています。
例えば、夏季ボーナスで60万円を受け取った場合:
1. 健康保険料の計算:
- 600,000円 × 10.00%(東京都の場合)= 60,000円
- 個人負担分:60,000円 ÷ 2 = 30,000円
2. 厚生年金保険料の計算:
- 600,000円 × 18.3% = 109,800円
- 個人負担分:109,800円 ÷ 2 = 54,900円
3. 雇用保険料の計算:
- 600,000円 × 0.5% = 3,000円
この場合、ボーナスからは健康保険料30,000円、厚生年金保険料54,900円、雇用保険料3,000円の合計87,900円が控除されることになります。
社会保険料の計算は複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解しておくことで、自分の給与からどれだけ控除されるのかを事前に把握することができます。また、昇給や転職の際の手取り額の変化を予測する際にも役立ちます。
年収別・世帯別の負担増加シミュレーション
令和6年度の社会保険料改定により、様々な年収層や世帯構成で負担がどのように変化するのか、具体的なシミュレーションを行いました。これにより、自分の家計への影響をより具体的に把握することができます。
年収300万円の場合の社会保険料負担を見てみましょう。月給約25万円のケースでは、標準報酬月額は約24万円となります。令和6年度の保険料率を適用すると、健康保険料(東京都の場合)は月額約12,000円(個人負担分)、厚生年金保険料は約21,960円(個人負担分)、雇用保険料は約1,250円となります。39歳以下であれば合計で月額約35,210円の控除となり、前年度と比較して約500円の負担増となります。40歳以上の場合は介護保険料約2,280円が加わり、合計で月額約37,490円、年間で約6,000円の負担増となります。
この年収層では、社会保険料の負担増は比較的小さいものの、手取り収入に対する割合としては無視できない影響があります。特に住宅ローンや教育費など固定支出の多い世帯では、家計の見直しが必要かもしれません。
年収500万円の場合には、月給約42万円、標準報酬月額約42万円として計算します。健康保険料(東京都)は月額約21,000円(個人負担分)、厚生年金保険料は約38,430円(個人負担分)、雇用保険料は約2,100円となります。39歳以下の場合は合計で月額約61,530円の控除で、前年度比約1,000円の増加です。40歳以上では介護保険料約3,990円が加わり、月額約65,520円、年間で約12,000円の負担増となります。
この年収層では、負担増加額そのものは大きくなりますが、収入に対する割合としては年収300万円の場合## 年収別・世帯別の負担増加シミュレーション(続き)
この年収層では、負担増加額そのものは大きくなりますが、収入に対する割合としては年収300万円の場合よりも相対的に小さくなります。ただし、絶対額としては年間で1万円以上の負担増となるため、家計への影響は無視できません。特に住宅ローンや教育費など固定費の高い世帯では、ライフスタイルの見直しや支出の再検討が必要かもしれません。
年収800万円の場合は、月給約67万円、標準報酬月額約65万円として計算します。健康保険料(東京都)は月額約32,500円(個人負担分)、厚生年金保険料は約59,475円(個人負担分)、雇用保険料は約3,350円となります。39歳以下の場合、合計で月額約95,325円の控除となり、前年度比約1,500円の増加です。40歳以上では介護保険料約6,175円が加わり、月額約101,500円、年間で約18,000円の負担増となります。
高所得層では負担増加額が最も大きくなりますが、可処分所得に余裕があるため、生活への直接的な影響は比較的小さいと考えられます。ただし、教育費や住宅ローンなど大きな支出を抱える世帯では、長期的な資産形成や将来の教育資金計画への影響を考慮する必要があります。
共働き世帯の場合の影響も検討してみましょう。例えば、夫が年収500万円、妻が年収300万円の世帯では、それぞれに社会保険料が課されるため、世帯全体での負担増加額は両者の合計となります。この例では、夫の負担増が年間約12,000円、妻の負担増が年間約6,000円で、世帯全体では年間約18,000円の負担増となります。
共働き世帯では、それぞれの収入に対して社会保険料が発生するため、世帯全体での負担額は大きくなります。しかし、世帯収入も多いため、相対的な影響は単身者や片働き世帯に比べて小さい場合もあります。一方で、共働きによる保育費や家事代行サービスなどの支出も考慮する必要があります。
これらのシミュレーションからわかるように、社会保険料の改定は全ての所得層に影響しますが、その具体的な影響度は年収や年齢、世帯構成によって大きく異なります。自分の状況に合わせて影響を正確に把握し、必要に応じて家計の見直しを行うことが重要です。特に、40歳を境に介護保険料が加わることで負担が大きく増加する点には注意が必要です。
社会保険料の節税・軽減対策
社会保険料の負担増加は避けられない現実ですが、適法な範囲内で社会保険料の負担を軽減する方法はいくつか存在します。ここでは、会社員や自営業者が活用できる対策について解説します。
適法な範囲での社会保険料負担軽減方法としてまず挙げられるのが、扶養制度の活用です。特に配偶者が働いている場合、年収の調整によって社会保険の扶養に入ることで、世帯全体の社会保険料負担を軽減できる可能性があります。
配偶者の扶養に入る条件と判断基準については、健康保険の扶養認定基準として、年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)という条件があります。これに加えて、被保険者(扶養する側)の年収の半分未満という条件も満たす必要があります。つまり、配偶者の収入がこの範囲内であれば、健康保険料の個人負担が不要となります。
ただし、パート収入を調整して扶養内に収めることと、働く時間を増やして収入を増やすことのどちらが世帯全体にとって有利かは、各家庭の状況によって異なります。社会保険料の負担軽減だけでなく、将来の年金受給額や税金の控除なども考慮した総合的な判断が必要です。
会社員が利用できる控除や特例としては、以下のようなものがあります:
1. 財形貯蓄制度:給与から天引きで積み立てる財形貯蓄は、社会保険料の計算対象となる標準報酬月額には含まれません。
2. 確定拠出年金(企業型・個人型):掛金は社会保険料の計算対象外となるため、将来の資産形成と同時に社会保険料の軽減にもつながります。
3. 住宅財形や財形年金:これらも社会保険料の計算対象とならないため、活用することで負担軽減が可能です。
4. 育児休業中の保険料免除:育児休業中は申請により社会保険料が免除されるため、育児休業制度を活用することも一つの方法です。
自営業者・フリーランスの場合の対策としては、国民健康保険と国民年金の加入が基本となりますが、以下のような方法で負担を適正化できる可能性があります:
1. 国民健康保険料の軽減措置:所得が一定基準以下の場合、保険料の軽減措置を受けられることがあります。自治体によって条件が異なるため、居住地の制度を確認しましょう。
2. 国民年金保険料の免除・猶予制度:所得が少ない場合や学生の場合、申請により保険料の全額または一部が免除・猶予される制度があります。
3. 小規模企業共済:掛金が全額所得控除となり、課税所得が減少することで、結果的に国民健康保険料の負担軽減につながる可能性があります。
4. 個人事業主の法人成り:事業規模によっては、法人化して役員報酬を調整することで、社会保険料の最適化が図れる場合があります。ただし、法人化には様々なコストや手続きが発生するため、専門家に相談しながら検討すべきです。
重要なのは、これらの対策は適法な範囲内で行うべきであり、不正な手段による社会保険料の逃れは法律違反となる点です。また、社会保険料の軽減は短期的なメリットがある一方、将来の年金受給額の減少など長期的なデメリットもあることを理解したうえで、バランスの取れた判断をすることが重要です。
専門家(社会保険労務士や税理士など)に相談しながら、自分の状況に最適な方法を選択することをお勧めします。
令和6年度以降の社会保険制度の展望
令和6年度の社会保険料改定を理解するとともに、今後の制度変更の展望についても把握しておくことは、中長期的な家計管理において重要です。日本の社会保険制度は少子高齢化の進行に伴い、今後も変化を続けることが予想されます。
今後予想される制度変更としては、まず年金制度の持続可能性を高めるための改革が挙げられます。具体的には、年金支給開始年齢のさらなる引き上げが検討されています。現在、厚生年金の支給開始年齢は段階的に65歳へと引き上げられていますが、将来的には67歳や68歳への引き上げも議論されています。
また、保険料率のさらなる引き上げも避けられない可能性があります。特に健康保険料については、医療技術の高度化や高齢者の増加に伴う医療費の増大により、今後も上昇傾向が続くと予測されています。
少子高齢化の影響と対策については、現役世代の減少による保険料負担者の減少と、高齢者の増加による給付需要の増大という構造的問題に対応するため、いくつかの対策が検討されています。
一つはマクロ経済スライドの厳格化です。これは年金給付額の伸びを抑制する仕組みで、今後もその適用範囲が拡大される可能性があります。また、高所得高齢者の年金給付の見直しや、就労インセンティブの強化なども検討されています。
さらに、社会保険の適用拡大も重要な変化です。令和6年10月からは、従業員数50人超の企業で働くパート労働者にも社会保険の適用が拡大される予定です。これにより、より多くの方が厚生年金や健康保険の対象となり、将来の年金受給権を得られる一方、事業主負担も増加することになります。
将来の保険料率予測としては、厚生年金保険料率は令和4年9月に18.3%で固定されましたが、健康保険料率は医療費の増加に伴い、今後も緩やかに上昇していくことが予想されます。試算によれば、2030年代には健康保険料率が全国平均で11%程度まで上昇する可能性があります。
介護保険料についても、高齢化の進展に伴い上昇傾向が続くと見られており、現在の1.9%から2030年代には2.5%程度まで上昇する予測もあります。
これらの変化に対応するためには、自助努力の重要性が一層高まることになります。具体的には、公的年金だけに頼らない老後資金の準備や、健康維持による医療費の抑制、キャリアプランの長期化などが求められるでしょう。
社会保険制度は社会全体のセーフティネットとして重要な役割を果たしていますが、その持続可能性を高めるためには制度の改革が不可欠です。私たちは制度の変化を理解し、それに適応しながら、自分自身の生活設計を考えていく必要があります。最新の情報に常にアンテナを張り、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも大切です。
まとめ
令和6年度の社会保険料改定について、本記事では詳細に解説してきました。主な変更点としては、健康保険料率が全国平均で約0.1%上昇し、介護保険料率も0.1%引き上げられ1.9%になりました。厚生年金保険料率は18.3%で据え置かれましたが、雇用保険料率は0.1%引き上げられ1.0%となりました。
これらの改定により、全ての所得層で社会保険料の負担増加が見込まれます。具体的には、年収300万円の方で年間約6,000円、年収500万円の方で年間約12,000円、年収800万円の方で年間約18,000円の負担増となる試算です。特に40歳以上の方は介護保険料も加わるため、負担増加額が大きくなる点に注意が必要です。
自分の手取り額への影響を確認するには、まず自分の標準報酬月額を把握し、それに各保険料率を掛けて計算する方法があります。また、多くの企業では人事部や総務部に問い合わせることでも確認できます。オンラインの給与計算シミュレーターを活用するのも一つの方法です。
社会保険料の負担は増加傾向にありますが、これらは私たちの健康や老後の生活を支える重要な社会保障制度です。健康保険は医療費の負担を軽減し、厚生年金は老後の所得を保障し、雇用保険は失業時のセーフティネットとなり、介護保険は高齢期の介護サービスを支えています。
短期的には負担増加に目が向きがちですが、長期的な視点でみれば、これらの制度が私たちの生活の安定に大きく貢献していることを忘れてはなりません。同時に、公的保障だけに頼らず、自助努力による資産形成や健康維持にも取り組むことが、将来の安心につながります。
社会保険制度は今後も少子高齢化などの社会変化に対応して変わっていくでしょう。最新の情報を把握し、自分の状況に合わせた対策を講じることが大切です。
よくある質問(FAQ)
社会保険料はいつから変わる?
令和6年度の社会保険料改定は、健康保険料と介護保険料については令和6年4月分(5月末納付分)から、雇用保険料については令和6年4月1日から適用されます。厚生年金保険料率については令和6年度は変更がなく、18.3%のままです。ただし、標準報酬月額の定時決定は毎年7月に行われ、新しい標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用されるため、この時点で保険料額が変わる可能性もあります。
給与明細の見方は?
給与明細における社会保険料の記載は、通常「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」などの項目に分かれています。40歳以上の方は「介護保険料」も別項目として表示されるか、または健康保険料に含まれて表示されます。控除額が前月と比較して増加している場合は、保険料率の改定や標準報酬月額の変更が影響している可能性があります。不明点があれば、会社の給与担当者に確認するとよいでしょう。
扶養範囲の条件は?
健康保険の被扶養者(扶養家族)になるための主な条件は、以下の通りです:
1. 被保険者の三親等内の親族であること
2. 主として被保険者の収入で生計を維持していること
3. 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であること
4. 被保険者の年間収入の半分未満の収入であること
これらの条件を全て満たす必要があります。扶養認定を受けると、健康保険料の個人負担が不要となります。なお、国民年金の第3号被保険者(専業主婦・主夫など)になるためには、年間収入が130万円未満という条件に加え、週の労働時間が20時間未満など、さらに条件があります。
保険料の上限額は?
社会保険料には上限額が設定されており、これは標準報酬月額の上限に保険料率を掛けた金額となります。令和6年度の標準報酬月額の上限は、健康保険・厚生年金ともに第32級の650,000円です。したがって、月額の上限は以下のようになります(東京都の健康保険料率10.00%の場合):
- 健康保険料(個人負担分):650,000円 × 10.00% ÷ 2 = 32,500円
- 厚生年金保険料(個人負担分):650,000円 × 18.3% ÷ 2 = 59,475円
また、賞与に対する保険料にも上限があり、健康保険は年度内の累計で573万円、厚生年金は1回の支給につき150万円が上限となっています。
会社と個人の負担割合は?
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、原則として労使折半で負担します。つまり、保険料総額の半分を会社(事業主)が、残りの半分を従業員(被保険者)が負担します。例えば、健康保険料の総額が30,000円の場合、会社と個人がそれぞれ15,000円ずつ負担します。
一方、雇用保険料は労使で負担割合が異なります。一般の労働者の場合、保険料率1.0%のうち、従業員負担は0.5%、事業主負担は0.5%となっています。
これらの負担割合は法律で定められており、会社独自の判断で変更することはできません。ただし、福利厚生の一環として、会社が従業員負担分の一部または全部を補助する場合もあります。その場合、補助された金額は原則として給与所得として課税対象となります。
